回想記 - Vol. 4

回想記 - Vol. 4

アルゼンチン遠征から帰ってきて、すぐに高知合宿に入った。

高知県の春野での約2週間ほどの合宿だったが、今思うとプロらしくない合宿であったように思う。というのは、宿舎がホテルではあったものの、4、5人に和室が一部屋割り当てられていたのだ。その後、合宿は二人一部屋、試合の前泊は一人一部屋を与えられるのが普通となるが。

この合宿終了後にトップチームとサテライトチームに分けられるとあって、全員が非常に集中して練習に臨んでいたことを覚えている。まだJリーグが開幕するという実感がなく、常に新しい経験を新鮮に受け止めていた。まだ、他のチームのこともあまり知らなかったが、この後プレシーズンマッチを沢山こなすことで他のチームのことも学び始めた。

それからアルゼンチン遠征から帰ってきた時に、早速銀行へ行って口座残高を確認したことを覚えている。というのは、支度金というものが振り込まれていたからだ。それまでは、もちろん給料をもらっていなかったし、学生という身分でいたのでプロという感覚もなかったが、その振り込まれた金額を見て興奮した。今考えると、自分はまだ本当のプロではなかったし、まだ何も成し遂げていなかった。それにもかかわらず、あれほどのお金を受け取るということに対して、自分の中でも整理がついていなかったように思う。

その年(93年)の11月に足首を骨折して長期離脱するのだが、それまでの間、プロ選手という肩書きに振り回され、自分がそれだけで大きな人間になったような錯覚を何度か覚えたように思う。それでも、自分はまだ常識を把握していた方だと思う。高校を卒業してすぐにあのような環境に放り込まれ、ろくに管理もされないようでは、道を踏み外しても不思議はない。事実、そういった選手をその後山ほど見ることになる。

そういう意味では、この年の大けがは自分にとってプロとして生きていく上で超えなければならない、避けては通れないハードルだった。