読書のすすめ - Vol. 2
健康のありがたさを人は病気や怪我をする度につくづく感じさせられるものだが、痛みや病が去ってしまうとそのありがたさをすぐに忘れてしまいがちである。この本は、改めて健康のありがたさと人生というものを考えるきっかけを与えてくれる。
この本と著者については私の妻が教えてくれた。というのは、この著者にも双子の子供がいて、双子の子育てメーリングリストで様々な情報が載っていたそうだ。プロのサーファーとして世界を転戦し活躍する著者が、突然のガン宣告を受け、ガンという病気と闘いながら家族との関わりや自分の天職について等を日記形式で綴っている。病状の表現は読んでいてため息をついてしまうほど辛い部分も多く、ガンという病気がどれほどひどいものなのかを痛感させられる。そんな中でも夫婦の絆や親子のあり方、そして限られた人生に対する処し方等、感じさせられるものが数多くあった。
当たり前のようで私たちが日々の生活でほとんど意識しないのが、人の人生はいつか終わるということ。時間というものは無限にあるような生活を送っている自分を大いに反省させられる。そして、家族というもののありがたさ、大切さ、かけがえのなさというものも改めて再認識させられる。しかし、この本の中で一番私が驚いた部分は、彼のプロアスリートとしての側面であった。彼のように世界大会を転戦しているようなトップレベルのアスリートは、大会が大きければ大きいほど膨らむプレッシャーを楽しんでいるのだろうと勝手に思っていた。しかし、彼はそういったプレッシャーに押しつぶされそうになりながら頑張っていたのである。選手として生活していた時は、夜ゆっくりと熟睡することはなかったと記されている。所謂不眠症である。そして、病気になってからの執筆業が自分の天職であると断言している。思わず自分の人生に彼の人生を重ねてしまった。
プロサッカー選手として9年間プレイしたが、試合の前夜はいつもプレッシャーを感じていた。だからこそ、ベストな状態で試合に臨めるように、非常に細かい事にまで気を配って自分を管理していた。食事の量・質・タイミング・睡眠時間・試合前の“儀式”など。今思うと自信のなさの表れだったのだろう。この本の著者ほど私は高いレベルまで達してはいなかったが、何となく彼の言わんとしていることがわかるような気がする。
思わず、現役時代に病院で危ない状態になった時のことを思い出した。肩の脱臼癖がついた私は手術をして2度と外れない肩にすることにした。当初1週間で退院できるほどの手術であり、全く何の心配もしていなかったが、術後に高熱が続き、肩の傷口から感染してしまい、非常に危ない状態にまでなった。結局1ヶ月半入院し、その入院期間中3回手術を受けた。その他、肩の感染を消毒するために常時肩に管を通し、薬を還流させる治療を結局2週間ほど受けることとなった。この間、ベッドに寝たまま一歩も動けず、寝たきり状態であった。この時に思ったことは、自分で食事をし、トイレもし、歩けることのありがたさである。
入団して時間をかけてようやくトッププレイヤーとして試合に出場できるようになったシーズンの終わりにこうした手術を受け、感染し、ひどいダメージを受けた。結局、次のシーズンも早々に復帰することができたが、感染を抑えるために抗生物質を飲み続けなければならず、副作用に長い間悩まされた。自分のキャリアの中でピークを迎えた時にこうした怪我と病気に悩まされたことは私のキャリアに大きな影響を与えたと今思う。この話については、また回想記で詳しく書きたいと思う。
とにかく、毎日を一生懸命生きなければならないと強く思った。そして、周りに存在するもの全てをありがたいと思う気持ちも忘れてはいけないとも。
