コーチの志 - Vol. 8

日本への一時帰国を終え、再渡英しました。大学を無事に卒業することができ、今後はマンチェスターでのキャンプの後、もっと現場での研修を積みたいと思います。さて、一時帰国中に神奈川県ジュニアユース連盟にてイングランドでの育成の取り組みについての講演する機会を頂きました。今回はその中で話をさせていただいた、メンタル面でのアプローチ方法の一部、どのように選手達に目標を設定させているかについてを、少しご紹介したいと思います。

目標設定には、一般的に3つの目標の立て方の種類があるといわれます。1つ目はOutcome Goalといわれ、主に結果を重視したり、相手との比較をするような目標設定方法です。例をあげれば、県大会でベスト8に入る、もしくはチームメイトとのポジション争いに勝つといったようなことです。2つ目のPerformance Goalと呼ばれるものは、結果よりも内容を重視した、個人としての目標の立て方です。例を挙げれば、3ヶ月後までにリフティングを50回出来るようになるとか、クロスの精度を上げるなどと自分自身の技術向上のための目標の設定の仕方です。そしてProcess GoalもPerformanceと同じようなもので、例を挙げるのであればクロスする時にきちんとボールから目を離さないといったような、実際に物事を行うときに注意することがらなどです。

もちろん、目標を設定するなかで3つとも非常に大事な要素です。しかし、育成年代では、80%の目標の設定を、Performance GoalとProcess Goalになるようにしなければいけないといわれています。というのも、自らが向上するためには、結果よりも選手個人の上達、つまり内容を重視しなければいけないからです。実際に、育成年代の中で、相手との比較や結果を(Outcome goal)重視してきた選手は、燃え尽き症候群になったり、ドッロップアウトしやすいといわれています。相手と競争するためにスポーツをするのではなく、自分の目標を達成して、達成感を味わう楽しさを教えようというものです。

あるプレミアのチームを例として引き合いに出すと、大きなチームになればなるほど、ユースから選手がトップチームに昇格してもほとんどの選手がすぐに試合に出場する事ができません。例えその選手が、ユース年代を代表する選手であったとしても、各国を代表するスター選手を押しのけて試合に出場する事はとても難しい事です。そういった選手が壁にぶつかる事が多々あるそうですが、その時に、チームメイトと比較をするのではなく、その選手個人の目標を設定してあげて、長期プランを立ててあげる事が必要だと某チーム専属の心理学者の方はおっしゃっていました。それから、とにかくコミュニケーションを大事にしているという事を話してくれました。できるだけ選手の気持ちを汲み取れるように、ユース年代では選手と、それから両親も含めてのコミュニケーションをできるだけ多く持つようにしているそうです。選手が両親からも褒めてもらうといったことも非常に大切だと思います。スポーツする上で、家族からのサポートは、とても重要な事です。

最後に目標を設定する中で気をつけておかなければならない事柄ですが、イギリスではSmart Goal (Specific, Measurable, Action, Realistic, Time)と呼ばれ、スマートな目標設定をしましょうといわれています。まず始めに目標が明確である事、次に、目標を達成できたかどうかを分かりやすくする事(コーチなどが成績などを数値で表してあげるのもよいかもしれません)。次に、目標がどのようにやって達成できるかを、記入してあげること。例を挙げるのであれば、FKを毎日20分練習して、ゴールに入る確立を30%から50%にするといったようなことです。それから、目標が現実的であること。そして最後に、いつまで、その目標を達成するのかを明確にする事です。

目標を設定する事は、モチベーションにもつながってきます。高い意識を持ちながら練習できれば、練習の効果も上がり、上達への近道になるのではないでしょうか。


志垣 良(しがき りょう)志垣 良(しがき りょう)

1980年5月9日生まれ、福岡県出身。小学校1年からサッカーを始め、東福岡高校卒業後、渡英。

2005年リヴァプール・ジョン・ムーアズ大学サッカー科学学科卒業。トランメア・ローヴァーズ下部組織とマンU・サッカースクールでコーチを務める。

FAコーチングライセンスおよびFAインターナショナルライセンス保持。

連絡先: ryo32@hotmail.co.uk