コーチの志 - Vol. 10

留学生活を終え、日本に帰国しました。今後は日本のサッカー界で今まで経験したことを生かし、そして更に多くの事を学んでいければと思っています。

さて帰国前に、マンチェスター・ユナイテッド、エヴァトン、リヴァプール、チャールトンに練習視察へ行ってきました。どのチームも素晴らしい対応をしてくれ、マンUはファーガソン監督が、エヴァトンは去年のプレミア最優秀監督のモイズ監督と助監督のアラン氏、リヴァプールは助監督のパコ氏が対応してくれました。各チーム、非常に面白い話が聞けたのですが、中でもリヴァプールのパコ氏の話は非常に印象的でした。

プレミアリーグのアシスタントコーチという位置づけは、監督と同様に非常に大きなものになってきます。パコ氏の場合、トレーニングメニューの作成から、遠征先でのホテルの部屋割り、年間計画表の作成、それから選手全員のコンディションの管理まで全て彼が一人で行っているとのことでした。実際に彼の部屋には、多くの資料が保管されており、彼の仕事振りには驚かされるものばかりでした。

また、マンチェスターで印象的だったのは、選手一人一人が常に高いモチベーションで練習に取り組んでいた事でした。正直、試合前の練習だったので、メンテナンス的な練習を想像していました。しかし、以前何かの記事で、ギッグス選手が"マンUでは練習から本気でプレーしないと、世界一流の選手が所属している中でポジションを獲得できない。まず試合に出場する事が非常に難しい関門だ"と書いてある記事を読んだ事があるのですが、本当に全ての選手が非常に真剣で、また高い意識を持って練習していました。ファーガソン監督曰く、"土曜日の試合で起きる事は、月曜日から金曜日に練習の中で起きる事。つまり練習でできなければ、試合でできるはずがないのだから、常に100%の状態で練習に望む事が勝者になるための最低条件なのだ"という事を話の中で強調されていました。そして、選手達もその言葉通り、本当に選手全員が真剣で、練習中のゲームでもすごく勝ち負けにこだわり、また個々の選手も自分の犯したミスが本当に悔しそうでした。逆に紅白戦での勝利チームは、肩を組んで歌を歌いながら喜んでいました。

また、監督として気を使っている点として、サブの選手や、モチベーションが低くなっている選手のケアをあげていました。というのも、必ずサブの選手や、怪我をしている選手などにも、彼らはチームの一部であり、貢献していると言う事を感じさせる事が必要なのだそうです。そのためにも、常にコミュニケーションをとり、チャンスがあれば試合に使い、平等に、そしてきちんとした評価をしてあげることが必要とのことでした。特に、若い選手には驚かされることが多いので、できるだけチャンスを与えているとのことでした。現在では、目先の勝利のために他のチームから買ってきた選手ばかりを使い、育成を無視したチーム作りをしているチームが目立ちますが、こうした彼の哲学が、ベッカム、スコールズ、ネビル兄弟、ギッグスがマンチェスターの育成から出てきた大きな理由なのかもしれません。

エヴァトンでは、マンチェチェスター、リヴァプールに比べると、チームの規模としては小さいのですが、そういった点を、監督、コーチ陣の努力によって補っていることを垣間見ることができました。実際に2日後のUEFAカップの試合に向けて非常に面白いトレーニングをしていました。練習メニュー的には、今回お邪魔した3チームの中で一番面白いトレーニングを行っていました。

最後に余談ですが、どのチームにも必ず選手リエゾンという、選手のグラウンド上以外での問題の対応をするお世話人が雇われていました。実際に、リヴァプールの選手リエゾン、ノーマン氏の部屋では練習前の選手が集い、テレビの受信料の支払い手続きの相談や、PCが壊れたから、どうにかしてくれなどといった選手の要望の応対に追われていました。この事については良し悪しがあるとは思うのですが、選手が集中してサッカーに打ち込めるといった点では必要なのかもしれません。特に1チームに選手の価値が300億円を超える選手達が所属しているわけですから。

さらに、どのチームも練習後に栄養士によって考えられたメニューに基づいて、昼食を食堂でとっていたのですが、リヴァプールFCで頂いた昼食は本当に今まで食べたイギリス料理の中で一番美味しいものでした!やはり、世界中から集まった選手には一般のイギリス料理の味では通用しないのでしょうか!?


志垣 良(しがき りょう)志垣 良(しがき りょう)

1980年5月9日生まれ、福岡県出身。小学校1年からサッカーを始め、東福岡高校卒業後、渡英。

2005年リヴァプール・ジョン・ムーアズ大学サッカー科学学科卒業。トランメア・ローヴァーズ下部組織とマンU・サッカースクールでコーチを務める。

FAコーチングライセンスおよびFAインターナショナルライセンス保持。

連絡先: ryo32@hotmail.co.uk