ニシノコラム - Vol. 02

サウスエンドの試合を観に行かないか?

試合前のスタジアムを盛り上げるチームマスコットとチアリーダーたちイングランド人の友人の誘いを受けて、イングランドに来て一番初めに観に行ったのが、8月16日に行われたディヴィジョン3の試合、ドンカスターサウスエンド戦だった。

ディヴィジョン3というと、日本のサッカーリーグでいう社会人地域リーグレベルにあたるのだろうか。サウスエンドというチームはその友人の出身地(ロンドン郊外)にあるクラブであった。「自分の街のクラブだから応援するんだ、当たり前だろ」というその友人の言葉に少し驚きながらも観に行くことにした。

わざわざリヴァプールから電車で2時間もかけて、自分のサポートするディヴィジョン3のクラブを応援しにいくのである。ロンドンにはプレミアリーグのビッグクラブがあり、そういうクラブをサポートしているのかと思ったらそうではなかった。その友人とともに観戦することで、少しでも地元のチームを愛するサポーターたちの気持ちに触れることができるのではと思ったのも、観戦することにした理由の一つであった。

試合会場はドンカスターという小さな街で、スタジアムは古く、ゴール裏はテラス(立ち見席)のままだった。(現在では、プレミアリーグのスタジアムにおいてテラスは禁止されている。)私たちの応援する場所は、もちろんサウスエンドのサポーターたちが集まるゴール裏。ロンドンから電車で3、4時間はかかるであろう場所へ駆けつけた、ゆうに200人を超えるサポーターたちが大声で歌いながら応援していた。メインスタンドとバックスタンドは満員で、観客数は5千人を超えていた。

テラスで試合開始を待ちわびるサウスエンド・サポーター結果は2対0でサウスエンドの完敗。サポーターたちは試合が終わる10分くらい前からうつむき、沈痛な表情をし始めていた。友人もまたうつむき、無口になっていた。

帰り際にその友人が、こんなつまらない試合に誘ってすまないと謝ってきた。そして自分の街のクラブについて強くなれない理由、勝てない理由を次から次へと説明した後に、「でも、俺はこのクラブをサポートするんだ。自分の街のクラブだから」と言った。
 
自然とレッズのサポーターたちを思い浮かべていた。負けた試合の後に車で帰宅する途中目にした、歩いているサポーターの寂しげな後ろ姿を思い出した。彼等と直接言葉を交わすことはなかったが、この友人の気持ちに限りなく近いのだろうなと勝手に想像していた。

選手のプレー一つ一つに喜び、驚き、失望し、怒るサポーターたちはレッズというクラブを愛してくれている。選手としてプレーしている時は、サポーターたちのそういった反応を観客席からの悲鳴やどよめきや拍手やコールとして感じてはいたが、改めて実感している余裕はなかった。
 
だが、こうして観客席からピッチ上の選手を応援すると、少しではあるけれどもサポーターたちの気持ちに触れることができたような気がする。
 
※浦和レッズサポーターズマガジン、REDS PRESSにて連載中の『西野努のリバプール通信』第1回を転載および加筆修正