FIMBA卒業生の声 - Vol. 2
― どういった経緯でMBA・フットボール・インダストリーズをご存知になったのですか。
片山: 私はスポーツとは何の関わりもない、いわば正反対のところに位置する大学の出身者で、卒業後も製薬関連会社で科学系の仕事をしていましたので、知り合いどころかスポーツビジネスに関する知識もほぼゼロでした。この類の仕事をしている人というのは具体的には代理人くらいしか知らない程度のお粗末なものでしたし。
リヴァプール大学のこのコースは、インターネットで検索していてたまたまヒットし、またイギリス留学関連の本などで知りました。その後直接リヴァプールを訪れスタッフと会い、私の一年先輩に当たる中村さん(2000/2001年度卒業生)の存在を知ったことから具体的な構想に入ることとなりました。
― 同コースへの進学理由をお聞かせください。
片山: 私のサッカーファン歴は10年ほどと非常に短く(Jリーグ元年から)、その前は11人でやるボールスポーツという知識しかありませんでしたし、海外のフットボールに興味を持ったのも98年のフランスワールドカップからと、長年ファンをやっておられる方々からみれば幼稚な部類に入るような人間です。しかしそんな私でも、Jリーグが様々な問題を抱えていることにファンの立場から憂慮していました。特に「横浜フリューゲルス解散」は私にとって非常にショッキングな出来事で、その時から本場のフットボールビジネスを学んでプロとしてその道に進んでみたい、と思うようになりました。
― 実際に一年間通ってみて、いかがでしたか。
片山: きつかった、というのが最も強く正直な感想でした。また、こちらの大学院は自主的にやらなければ役に立たないことも強く感じました。1年のコースには講義、課題や試験などの必須項目もかなりあり、それらを単にこなすだけならばそうも苦労もしなくて済んだようです。事実クラスメートの中には最初から学位をとる目的だけのために来ている学生も少なくなく、また途中で持続力が途切れてしまいドロップアウト寸前になる人たちもいました。しかし来たからにはちゃんとやろう、とやる気になればすることは無限にありますし、私の場合は欲張っていろいろ手がけてしまったので、修士論文作成の3学期には自爆状態になってしまい、非常にハードでした。
期限限定付きでも好きなことを好きなだけ勉強することができたのは非常に良い経験だったと思っています。前述したようにかなりきつかったのですが、何とか乗り切れたのはやはり「好きなこと」をやっているという実感があったからだと思います。また、なんといってもフットボール中心で世の中が動いている国ですから、ありとあらゆる情報が自動的に入ってきますし、少しでも能動的になればそれ以上のことがどんどん得られますので、そのような環境にいたことがとてもうれしく、それら全てが自分のためになったとも実感しています。
― 在学中に印象に残った出来事や、ためになった授業は何ですか。
片山: コースにおいて最も強い印象は、出身国や言語が違うと物の受けとめ方や考え方がかなり異なってくる、ということです。興味の対象や知識のレベルも同じではないので、講義の際の学生からの質問などもその内容がかなり違うこともままありました。またスタッフからの知識はどれも高度で専門的なもので、基礎知識がある程度ないとついていけない、ということも強く感じました。フットボールの科目であれば、この国のフットボールについての広く詳しい知識に基づいた講義などが多く、外国人の私にとっては躊躇してしまうこともしばしばありました。
一般MBAの講義は私にとっては残念ながら興味深いものではありませんでしたが、フットボールのコースはほとんどどれもかなり面白いものでした。週に1回か2回ゲストレクチャーがコースを訪れバラエティあふれ興味深いものが講義を提供してくれました。公ではなく、ほぼプライベートのような環境なので、ゲストの本音に近いような発言も聞かれましたし。FIFA、UEFAやFAといった名だたる組織からのレクチャーもありましたが、今だからこそ特に印象深く感じているのは、リーズユナイテッドの前チェアマン、ピーター・リズデイル氏の現役時代の話を聞けたことです。
― では、逆に苦労したことや不満に思ったことはありますか。
片山: 私の代は30数人のクラスメートがいましたが、ほぼ1/3ほどが英国人でその多くが大学を卒業してすぐに入学してきたような非常に若い学生たちでした(21〜23歳)。私は残念ながら彼らとはほとんどコミュニケーションを取ることができませんでしたが、それはジェネレーションギャップを感じたこともありますが、やはりなんといっても一番の問題だったのは言葉の壁でした。英語を母国語とする学生たちにとっては、稚拙な英語しかできない外国人たちに興味を示すことはほとんどなかったようで、私も最初はかなり努力したものの次第にあきらめを感じるようになり、ほとんど外国人だけで付き合うこととなってしまいました。
また、同じ英語でも出身地が違えば、それは非常に異なったものであった点も非常に苦労しました。スタッフやレクチャラーの英語はほぼ問題がないものでしたが、英国人のクラスメートには北アイルランド、ミッドランドや地元リヴァプールからの学生たちもいて、彼らの英語は私にとっては聞いたこともない国の言語でしかなく、1年間通った後でもおそらく10%もわからなかったというのが正直なところです。
初めてこのコースに入ったときに私の隣に座ったのが純粋なリヴァプールアクセントを話す学生で、私は最初は彼女がドイツ語を話しているのだ、と思いましたが、それが英語であるとわかってショックで泣きたくなったほどでした。リヴァプール市内もキツいリヴァプールアクセントで話す人たちであふれかえっていて(当たり前ですが)、たかだかコーヒー1杯頼むのに何を聞かれているのか聞き取れず何回聞き返してもそれでもわからず他のスタッフに助けを求める、というような今だから笑い話で済みますが、当時は泣きが入ってしまうほどの経験も大いにしたものです。
コースに対する不満はもちろんありましたし、他の学生も大なり小なりあったようです。私の代の一般MBAの各科目は興味深いものだったとはいえず、レベルも高いものであったとは言えなかったことが最も残念な点でした。一般的なMBAのコースは職務経験が5年以上あることが条件、としているところが多いようですが、私の代のこのコースを初め、他のMBAのコースにはそのような条件がなく、前述したように新卒の学生がかなり多かったことも少々奇異に感じたのは事実です。もしフットボールの科目のクオリティーが低ければ、このコースはお勧めし辛いものだったと思っています。
フットボールインダストリーズの開始当初からスタッフたちより、このコースは専門学校でも職業斡旋校でもない、としっかりと宣言されていましたが、それでもおそらく大部分の学生たちが修了後は就職先がみつかるものだと期待しつづけて、最後には大いに不満と落胆を表明することもままありました。3学期は修士論文の作成時期に当たり、それに向けて学生たちは自分のテーマや内容を考えて希望の研修やリサーチ先を探すことになります。私の場合はそのテーマや学びたいことがはっきりしていたのでこの点ほとんど困ることはありませんでしたが、明確なアイディアやプランのない学生たちがこの点でかなり苦労することになったようです。スタッフはあくまでも学生たちが能動的になったときに足がかりを得る機会を提供するだけで何の責任も義務もないのですが、それをしっかり学生たちに理解させる努力を欠いていた点がスタッフ側にも問題があったようです。
― このコースはどんな事を求める方に最適だと思われますか。また、その逆のケースも挙げていただけますか。
片山: MBAは一般的に言われていることですが、過去に実務経験のあった人がさらに知識を深めてステップアップするためのものだと言われています。このコースは前述しましたが、大学新卒者や職務経験のない人も受け入れられていますが、まずビジネスの基礎を知っている人であることが1年間という非常に短い期間(正味は半年程度しかありません)を有意義に過ごしていくためにも必須条件ではないでしょうか。
私の場合は科学系出身と全く分野が違いましたが、実務面ではマーケティングや商法などに関わる仕事も通常やっていたので基本からやり直す必要はなく、会計以外ではそんなに苦労することはありませんでした。サッカーと何の関係もない私のような人間がこのコースをとりあえずなんとか修了し、ある程度関連した仕事をやっているのはたまたま運がよかったことも事実ですが、なんと言っても職歴がある程度あったことに間違いない、と確信しています。
― ご卒業後の職歴をお聞かせください。
片山: 私の場合はちょうど時期的に恵まれていて、インターンシップでは実践的なことが体験でき、コース修了後はプレミアシップのクラブで半年間仕事をし、現在は英国のマーケティング・マネージメント会社で実務に携わる機会などを得ています。しかし、こちらでEU圏外の人間がワークパーミット(就労ビザ)を、しかもフットボール関連の組織から得るのは需要がほとんどないことから不可能に近いことであり、私の場合はたまたま非常にラッキーであっただけで例外中の例外と思っています。
― 今後はどのようなキャリアプランをお持ちですか。
片山: 現在私が勤務している、FMMインターナショナルはフットボールインダストリーズのコース出身者たち数人が設立した会社で、世界中に広がるネットワークを利用して、国際間のリサーチ・コンサルタント業務やマーケティング・マネージメントサービスなどを多岐に渡って提供しています。
当社はこれから日本市場に進出し、日本と主にイングランドの間におけるフットボールビジネスをさらに発展していくための種々業務を実施していくことを予定しており、現在その実現化に向けた検討を続けています。もし当社にご興味をお持ちの方がおられましたら、どうぞホームページをご覧ください。また私宛にお問い合わせいただけましたら大変うれしく存じます。
― 同コースへの入学を希望する皆さんにアドバイスをお願いします。
片山: 1年間このコースで日本人が学ぶためには十分な英語の準備とある程度ハードな生活にも耐えられる自信が必要となります。そのためには強い意志を持っていないと簡単なことではなく、また金銭的にもある程度ゆとりを持って渡英しないと精神的にも物質的にもきつい生活になってしまいます。コースに通いながらアルバイトをすることは認められてはいますが、実際にはほぼ不可能と考えてください。
このコースは1年のコースですが、実際は半年ほどしか大学で学ぶことができない非常に短いものです。ですから時間をできるだけ有効に使うためにも、単にサッカーが好きでそれに関わる仕事を何かしたいというよりも、ある程度具体的なアイディアや希望を抱いている人に向いていると言えると思われます。
今まで私のようにプレミアシップのクラブで働いてみたいのでこのコースに入学したい、という問い合わせをいくつも受けてきましたが、大変厳しく冷たい言い方ですが、需要がないことから可能性はほぼないと申し上げます。またこのコースを職業訓練校や就職斡旋場所だと思われないことです。このコースは、サッカービジネス界への「足がかり」を与えるもので、結局のところそこで勉強する人次第なのだ、と私は強く感じました 。
職歴:製薬系会社勤務(10年半)、フルハムFC勤務(2002年11月〜5月)、FMMインターナショナル(2003年9月〜現在)。興味あるテーマは『世代を渡るファン層の固定・確立化、ヨーロッパフットボール技術の日本への導入促進』。
連絡先:miwakatayama@fmminternational.com